泳ぐ
個人差はあるが、たいてい長時間泳ぐのにはクロールか平泳ぎだろう。
ゆっくり、たっぷり息を吸い、半分だけ吐き出したら頭の先まで身体を沈め、水中からスタートする。
急がず、我慢しすぎず、リズムよく呼吸をとり泳ぐ。
泳ぎ始めてしばらくすると、息が続かなくなってくる。
苦しい。
しかし、そこであせってはいけない。
呼吸をするペースを少し早め、逆にフォームはゆっくりに。
少しの間の苦しさを乗り越えると、ある時ふっと呼吸が楽になる。
ここからが始まりだ。
水のうねりに身体を添わせ、自身が作り出す流れにそって身を放つ。
水中のくぐもった音の世界や水中眼鏡を通してはっきりと見える白濁した大きな、小さな泡。
力を持った水は、色を持つことを知る。
地上と異なるのは自分が何かの中に存在していることを実感すること。
空気は見えない。
けれど水は私の肌に触れ、ほおを撫で、指先を包みこみ、胸を押し上げ、口を封じ、私を抱く。
そして時に私の中に流れ込み、私の体の一部となる。
安心して身をゆだねることができる場所。癒しの水。
鬱の気分になることは、誰にだってある。
そんなとき、どう過ごすか。
ふて寝、やけ食い、自棄酒、愚痴、八つ当たり、泣く・・・
私は、ひたすら泳ぐ。
攻撃、自虐、忍耐、無心、そして快楽
泳ぎはそれら全てを併せ持ち
そして疲れ切った私の身体に新しい水を流しこみ、心を浄化してくれる。
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